“金を盗まれたくなかったら、現金を持ち歩け。カードと一緒に100ドル札を持っているといい。そうすればいざというときに、命のほうが大事だと誰かに伝えられるぐらいは寿命が延ばせるだろう。”
乾杯する直前にする話じゃないだろう(誕生日パーティ)と思ったけれど、この友人は思い出したかのように色々なことを教えてくれました。
“人混みで誰かがぶつかってきたらそれは合図だと思え。そいつには目もくれなくていい。間違っても立ち止まって謝る必要など無い。何かがあるとしたら二人目だ。二人目に注意しろ。”
“助けを呼びたくなったら、間違っても”タスケテクレ”なんて言うな。どんなに大きな声だって駄目だ。仮に聞こえたとしても命をかけて寄り道する人間なんていない。君の声が聞こえたとしても、周りの人間はいつもより良い姿勢で歩きはじめるぐらいだろう。まるで私の注意が君に向かなかったのは忙しかったからだとでも言うかのようにね。”Justin Bieber がいる”ぐらいのほうがよっぽどいい。君にとって大事なものと、世間一般の興味は違うんだよ。驚く程にね。本当なんだ。これには驚くよ。”
“とにかく道には迷うな。君には目的地があって、そこでやることも決まっている。もしも自分がどこにいるのかすらわからなくなったとしてもとにかく歩きつづけろ。正面を向け。同じ通りを往復するだけでもいい、歩き続けろ。退屈そうに見えても駄目だ。何も考えることが無かったら、誰かを迎えに行く途中だと思い込め。待っているのは君じゃない”
…などなど。
恐るべき説得力をもって話す彼には、本場の知識と経験を持っているに違いないと想像せずには居られませんでいた。
でも、詳細は私に何にも教えてくれませんでした。よくわからない人でしたが、自分で頑張って働くよりも他の誰かの助けで生きていくのを好む人でした。
酔いが回った後は、Tim O’Brienの小説の素晴らしさを、夜の公園を歩きながら、こちらの迷惑も知らずに文学の何たるかを、2,3種類しかない表情で楽しそうに語っていたのを思い出します。
私が憶えているのは水滴でこもった遠くの飛行機のエンジン音と長い信号を待っているトラックのアイドリング。木が風で揺れる音と雨水が傘に落ちる音と一緒に聞こえてきて、すぐに消えていくような声でした。時間もいつもより早く過ぎていって、話の内容よりも、そんなことを覚えています。役に立つような話は一切しない人でした。
当分会えそうにはないのですが、元気で居て欲しいと思った夜でした。
他の方々のように何か役に立つことを書きたかったのですが、 ”LifeHack” から私にうかんできたことはこれくらいでした。残念。